里海資本論

日本社会は「共生の原理」で動く

井上恭介,NHK「里海」取材班

里山から里海へ。人々の"営み”は海をも含む広域経済圏を成立させていた!
里海=人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム。瀬戸内海の再生で世界から注目されている。地球の限界を救うモデルとして、瀬戸内海生まれ日本発の概念が、世界経済を今まさに変えようとしている!
[定価]
本体価格800円+税
[発売日]
2015年07月08日
[判型]
新書判
[ISBN]
978-4-04-082013-2-C0233

【目次】
はじめに――「里山資本主義」から「里海資本論」へ
海をよみがえらせる「里海」/海に種をまく漁師たち/大都会で「里山志向」が爆発している/都会も田舎もなくつながるボーダーレスな時代がやってきた/さらに一段上の「懐かしい未来」へ/資本主義のどんづまりに登場する「里海資本論」/一九世紀の資本主義のユートピアも「里山・里海」だった

第一章 海からの地域再生
       ――古き筏が瀬戸内海を変えた

瀬戸内海を代表する「里海の装置」/カキ筏は「高度経済成長の産物」である/瀕死の海/カキ筏が「瀕死の海」を回復させた/カキの恐るべき浄水能力/宮島水族館が気づいた「楽園」/カキ筏の上は絶好の釣り場/そこにある「竜宮城」/自然のままより海を豊かにする「里海の営み」/カキ漁師は広島湾をさまよう/カキの稚貝の「最強軍団」をつくる

第二章 「邪魔もの」が二一世紀の資源
      ――「里守」が奇跡の海を育てた

世界の里海の頂点、日生/水中の森は海賊の海にも広がっていた/瀬戸内の一人の漁師は気づいていた/二人三脚のプロジェクト/「ごみ」だったカキ殻が局面を打開した/底抜けに明るい漁師たちの漁港/「壊すのは簡単だけど元に戻すのには時間がかかる」/復活してきた「つぼ網」の漁/アマモの森に分け入る/「里海資本論」の経済成長/アマモを間引く/昔ながらのサウナ「石風呂」/アマモは優秀な肥料だった/里海の肥料は確かに植物を元気にする/「流れ藻」を畑にすきこむ島/竜宮の乙姫の元結の切り外し

中間総括 「地球の限界の克服」という課題
        ――マネーとは異なる豊かな解決策を

「里海の作法」/「縄文は爆発だ」/「巨大定住集落」ができた「自然と結ぶ関係の深さ」/「地球の限界をどう克服するか」を迫られた世界/「マネー資本主義」による解決策

第三章 「SATOUMI」が変える世界経済
        ――「瀬戸内海生まれ日本発」の概念が広がる

おまえは「漁師の召使い」か/「漁業とは海のおこぼれを頂戴する産業である」/人間くさいつながりが「里海の思想」を育んだ/結びつきのきっかけは互いに認め合う「骨のある人間」/「人脈作り名人」/世界の常識は大きな転換点を迎えていた/各国で広がる「里海の成功体験」/フランス人も「里海」に惹かれる/さらに進化する「二一世紀・瀬戸内海の里海」/

第四章 “記憶“と”体験”による「限界」の突破
       ――過疎の島が病人をよみがえらせる

二一世紀の最先端地、弓削島/「しまでCafeで朝食を」/島の実力「てんこもり」/「お年寄りの施設」も最先端/「何もない島」こそ「最高の施設」だった/陽だまりの散歩道/「ここだと名前で呼ばれるんです」/挫折した者だからこそできることがある/「よいしょ」の大合唱/若者もお年寄りも生き返る島/一軒残った帆布工場が島を変えた/綿花でどんどん広がる人のつながり/懐かしい感触と色は島の記憶を呼び戻す力/瀬戸内を飾る白い花景色/「白い風景」の記憶を次世代に刻む/海からの「おすそわけ」

第五章 広域経済圏となる「里海」
       ――大都市でも「里山」「里海」はできる

恐竜博物館で子どもたちを出迎える「虫」/よみがえる「生きている化石」/「こんなに動かない動物を見たことがない」/結局一番知っていたのは「里海の漁師」だった/野生のスナメリを追う/還ってきた生き物/カキの季節がやってきた/各地に、一般市民に広がる「里海」/里山と里海がつながる/広域経済活性化 広域環境問題解決としての「里海」/能登の「田舎時間」に魅せられる都会人たち/東京でもできる「里海」「里山」

最終総括 里山・里海が拓く未来
       ――有限な世界で生命の無限の可能性を広げる

都会の住宅街で復活するせせらぎ/最新技術で「小川を復活」させることができる/イミテーション、フェイクから本物の時代へ/石見銀山のグローバリズムとボーダーレス/里海・里山の基本をなす作法は日曜夕方の「渋谷発の私鉄の中」にもある/世界の共鳴と日本からの発信/自然はまだまだわからないことだらけである/有限な世界で、生命の無限の可能性を生む

おわりに――わたしたちは、生きものである

解説(藻谷浩介)――ささやかな力の結集に信を置く社会へ
『里山資本主義』の焼き直しではない、新たな『里海資本論』/「里山」は入り口、「里海」はゴール/「そこに内湾があったから」三大都市圏はできた/日本の三大都市圏こそ、未来の「里海」復活の主舞台だ/一神教対八百万の神々、この原理的対立の先に未来がある/一つ一つは微力な主体の相互作用だけが、均衡を回復する道筋である